境川 大畠谷右俣(オバタキタン) 沢登り 【2020年9月20~21日】
概要
今年度の目標の1つであった大畠谷右俣に行ってきました。ここは通称オバタキタン(大畠谷北谷?)と呼ばれています。噂通りの素晴らしいマルチピッチを楽しめる沢でした。
●メンバー:イボGさん、TUBUさん、RYOさん
●アクセス:桂湖南端部大笠山登山口に駐車
※ほぼ路駐になり、登山者も多いため早めに行かないと大分手前に駐車させられることになります。
●装備:一般遡行装備+登攀具
※カム類は殆ど出番無し。ハーケンを多めに持って行った方が良い。イボイノシシの記録があり持って行ったが使わなかったです。
●沢グレード:5級
●フリクション:とても良い。ラバーでもフェルトでも可
●下山難易度:登山道があり容易だが長い。北側の開津谷を下降するルートも一般的らしい
●遡行図:『渓谷登攀』他WEB上に転がっているものを
※ネット上のものでは、京都雪稜クラブ様の遡行図が一番見易く正確だと感じました
(下記参照)
京都雪稜クラブ:2005年09月 白山 大畠谷右俣〜開津谷(沢登り)遡行図
●テン場:二股は思ったよりも広い。雪渓無ければ3P位余裕で行けそう。ただし、薪は少ないです。
●コースタイム:
1日目
入渓地点(6:55)…2段25m(7:50-9:10)…2連続CS滝(10:45)…2段40m滝(14:00-14:55)…二股(15:20・泊)
2日目
登攀開始(6:30-10:10ロープ解除-11:00巻き終了)…40m滝(11:40)…15m滝(11:55)…登山道出合い(11:55)…大笠山山頂分岐(14:10)…駐車場(17:20)
●入浴:くろば温泉 料金600円 営業時間21時まで 食事処有り
ルート図と縦断図
遡行記録:1日目
入渓
大笠山登山口に駐車し、準備をしてスタート。大笠山は割と人気らしく、連休等言うことも相まってほぼ満車。ここに駐車しないと数百メートル戻ることになります。
登山口の橋向かって左手に踏み跡があり、降りると即入渓できます。ダム満水の場合は初っ端泳ぎみたいですが、今回はダムの水量少なかったため全く水はありませんでした。
暫くは普通。序盤は釣り人が多く入るらしい。
核心①:2段25m滝の巻き
1時間ほどで2段25m滝に到着。ここで先行パーティーに追いつきました。ここは少し戻って奥の10m滝ごと左岸から巻き。先行パーティーは右岸から巻いてました。
一部高度感のある草付きや落石しやすいところもありましたが、懸垂下降せずに降りる事ができました。時間にして1時間20分ほど。
Fig1 喜びに満ち溢れるRYOさん
巻き終わると暫くは普通。明るく開けており気持ち良い。
核心②:ゴルジュ内小滝帯
暫くしてゴルジュに入ると小規模な滝が連続します。ここは右岸からフリーで。
ここは左岸から容易。他いくつかの簡単な小滝を登っていきます。
2連続CS滝。ここは奥のCS滝が明らかにムリそう。左岸の草付きを巻き、奥のCS滝の斜め上辺りの残地支点を使い懸垂下降。
残地支点は2か所、古いハーケン3枚にスリングが掛かっているものと、その下に伸びきったリングボルトに新しいハーケンが打ち足されたものがありました。
CS滝後も小滝が続きます。
ここは1段目はフリーで容易。2段目は流真右側から登ります。
2段目はロープを出してイボGさんがリード。ハーケン2枚で支点構築し後続確保。中間支点はとれません。
個人的には小畠谷でここが一番悪かったです。ホールドが細かい上に小さなフットホールドに立ちこみムーブになるのがいやらしい。
ここは左岸から。落ち口が悪いので念のためロープを出しました。
最後は快適なシャワー。ここを過ぎると暫くゴーロ帯歩き。
柱状節理の岩壁も出てきます。
核心③:2段40m滝の巻き
二股が大分近づいてくると、1日目最後の核心となる40m滝が現れます。
ここは左股の枝沢からルンゼを登り、右岸のバンドを経由して巻きます。我々は少し登り過ぎてしまい、バンドの上に出てしまったので懸垂下降。丁度降りたところが滝の落ち口でした。うまくルート取りが出来れば懸垂下降無しで巻けると思います。
落ち口から40m滝を見下ろす
あとは適当に進んでいくと、二股に到着!圧倒的スケールの大スラブに一同大興奮!!
Fig2 RYOさん大興奮
明日のルート等を確認した後は、テキトーに巻きを集めてタープを張り幕営。思ったよりも河原が広いため幕営適地は多いですが、立木等が無いためタープが張りづらいです。薪をポール代わりにして設置。薪は少な目だけど木目の密な流木が多いため、火が長持ちしてある程度焚火を楽しめました。
夜はエアーマットがパンクしたうえ、雨が降り端に寝ていた私はもろに水を浴び寒い夜を過ごしました。おかげで翌日体調不良に苦しむことに。
遡行記録:2日目
核心④:大スラブ登攀
4時起床の6時30分から登攀開始。前夜に雨が降ったが、風の通りが良く岩はほぼ乾いた状態でした。ルート取りは上記の通り。ゴルジュ手前から凹角沿いを登り、トラバースしてルンゼの所からスラブ登攀といったルートを選択しました。後で調べてみると黄色いラインから取り付くのが一般的みたいです。
難易度は全体的にⅢ級位となり難しくはないですが、岩が非常に脆くハーケンを打つと剥がれるものばかり。プロテクションが取れるところが少なくリードクライマーはほぼフリーで気を抜けないクライミングになります。また、浮石が多く後続に落石を落とさない登りとルート取りが重要です。
・1ピッチ目(私がリード)
凹角から登り落石が積もったバンドでビレイ。凹角にカムが決まるが、終了点はバンド貧弱な木の根っこと殆ど効いてないハーケンのみ。
・2ピッチ目(イボGさんリード)
バンドからルンゼにトラバース。50mロープほぼ一杯に使います。ルンゼのクラックにはハーケンバチ効きですが、中間支点となるリスは乏しくハーケンの効きも悪い。
・3ピッチ目(私がリード)
ルンゼから取り付き、右上気味に登ってゆく。ここも50mほぼ一杯。プロテクションは殆ど取れなかった。このあたりから浮石が非常に多くなるため注意しながら登ります。終了点として使えるクラックやリスはわずか。
・4ピッチ目(イボGさんリード)
3P終了点から樹林帯を目指して左上気味に。ここも難しくはないが、剥がれかけの岩に乗るので慎重に。振り返ると左股の大滝と右股のゴルジュを眺めることができます。見るからに突破困難な滝が見えます。
・5ピッチ目(私がリード)
ルンゼ沿いに樹林帯沿いを登ります。灌木が多くなったところでピッチを切り、ロープ解除。
下降~詰め~下山
ここからまた沢に戻るために下ります。途中のルンゼトラバースは下部はちょっと悪そうなので上部から。ルンゼを渡った尾根から沢に向かってヤブ漕ぎ。高く太い樹の方に向かって進むのがポイント。
懸垂の記録が有りましたが、そのまま歩いて降りることが出来ました。
ここで沢に下る際イボGさんがマムシに気づかず斜面を滑り降りたのが本山行において一番のピンチでした。マムシも巨大生物にのしかかられビックリしたでしょう。
沢に下ると渓相は非常に穏やかになります。大休憩をとって詰めに入ります。
40m滝はホールド豊富で緩やかなためフリーで越えます。40m滝を過ぎて暫くすると二股になっており本流側には15m滝が掛かります。ここで最後の給水し、左股の支流を詰めて行くと間もなく水流が途絶えてヤブ漕ぎパートに入ります。
ヤブはそこまで濃くは無いです。日本海側特有の粘り気のある木々をかき分けたり乗り越えたりして行く感じでササは少な目。1時間ほどで登山道に合流。
後はアップダウンのある長い長い大笠山登山道を4時間半ほど歩いて下山。体調不良のうえ、フル装備で標高差1200m以上の道のりが辛かったです。登山道は非常によく整備されており、迷うところは特にありませんでした。
帰りは『くろば温泉』にて入浴と食事を済ませて解散。
下山が長くて大変でしたが、最高のロケーションを堪能できる素晴らしい沢でした。