【2022年7月2日】南アルプス戸台川 イワンヤ沢 沢登り(左股遡行右股下降)
滝洞谷やR口ルンゼ、そしてこのイワンヤ沢に存在する石灰岩ゴルジュは洞窟のように深く切れる威圧的な風景が魅力。ケイビングもやっていた身としては一度訪れたい場所でした。数年前の豪雨の影響か、WEB上の以前の記録とは渓相が全く異なっておりました。特にF3,F4に関しては数メートルの差異があり、水の力の凄まじさを実感する山行でした。
●メンバー:私、IVOGさん、TSちゃん
●装備:一般遡行装備+登攀具 プロテクションはハーケン、カム類を使った。アブミも必要。
全体的に岩が脆く、ハーケンが効きにくいため神経を使う登攀となった。
●体感沢グレード:4級位 沢としては非常に短く迷うところも無いが、登攀要素が強いため4級とした。
●フリクション:ヌルヌルのコケ。登攀があるのでラバーが良い。今回は私はラバーソールの沢靴、TSちゃんはフェルト、IVOGさんはフェルト→フラットソールで臨んだ。
●見所:圧倒的ゴルジュ
●下山難易度:容易
●遡行図:無し ※少なくとも2019年以前とは渓相が異なっています。
遡行図はイボGさんが書いてくれましたので、下記ご参照ください。
イワンヤ沢 左俣(右俣下降) 20220702 - 続 イボGの山
●コースタイム
仙流荘(6:10)=バス移動=戸台大橋(6:15)…戸台駐車場(6:30)…イワンヤ沢出会い(7:00/7:15)…二股(8:30)…左股遡行…左股ゴルジュ突破(12:50)…右股下降…二股(15:00)…イワンヤ沢出会い(16:00)…仙流荘駐車場(18:00)
※2022年7月2日現在、戸台駐車場までのルートが一般車両通行止めのため、戸台大橋までは南アルプス林道バスを利用した。
ルート図
遡行
スタート~出合
上にも書いた通り、法面部の土砂崩れのため戸台駐車場までの道が一般車両となっていたため、南アルプス林道バスに乗車し戸台大橋からスタート。南アルプス林道バスはシーズンに入ったこともあり長蛇の列。10台のバスを所有しているようだが、全て出払っても乗れないほどでした。
戸台駐車場からは30分ほど河原歩きを楽しむとイワンヤ沢出合いに到着。出合いから真っ白な石灰岩を見ることができ、ワクワク感が高まります。不要な荷物はここにデポしてスタート。
出合い~二股
出合いから進むとすぐに12m滝。ここは右岸にビッチリとトラロープがフィックスしてあります。
平凡な沢を進んでいくと、目の前にデカい石灰岩の岸壁が見えてきます。クリスシャーマが登ってそうなカッコイイ壁です。壁が見えると名物?の洞窟状滝に到着です。中に入ってみるとガッツリハングした滝。右岸から簡単に巻けます。
出合いから一時間ほどで二股に到着。覗いてみると、今までの穏やかな風景から一転して凄まじいゴルジュ。これぞ石灰岩ゴルジュ!素晴らしい!
ここで登攀具などの準備をして左股遡行開始。
左股遡行
F1 4m
F1は右側から上がり、チョックストーン左側をジャミング。下山後過去記録を見ると、下部の岩はもっと埋まっており、1mほど高くなったようです。
F2 8m 核心①
第1の核心。IVOGさんリード。下部が悪い。最初にフェルトソールで取りついてみるものの、全くフリクションを得られなかったようで、フラットソールのクライミングシューズに履き替えトライ。
中間に残地ハーケンあり。全体的にこの沢はリスに乏しく岩が脆いため、ハーケンを打ち込みにくいです。落ち口に半効きのハーケンを打ち突破。
滝の上の支点は滝上の残地ハーケンで。
F3 4m F4 7m 核心②
F3,F4は最初は私がリード。上部でIVOGさんにバトンタッチ。
詳細は後述しますが、以前はF3が第2の核心となるチョックストーン滝でF4は3mほどの滝だったようです。F3のチョックストーンが外れ、F4下部に堆積していた土砂も含めて軒並み流出したため、地形が変わったようです。ここが一番の核心でした。
F3は右岸からトラバースで問題なく超えられるものの、F4下部はツルツルでホールドも乏しくメチャクチャ悪い。
取りつきは5級くらいのボルダームーブで上部のガバを取り、マスターカムオレンジをきめる。ここから上部のハングまでは非常に悪く、IVOGさんとリードを交代しながらトライを重ねるもののどう頑張っても登れない。私もIVOGさんもフォールしマスターカムがぶっ飛ぶ。
何とかキャメロット0.75と1.0をきめてA0。ここで固め取りしたのは0.75をきめた岩がグラついていたからです。このクラックもいつ壊れるのか…。
上部はホールドが細かく岩がボロボロでプロテクションも取れず、沢靴での登攀に心が折れ、IVOGさんに交代(なすり付け)。IVOGさんは見事雄たけびを上げながら突破。ナイスクライミングでした。
ハング下は結局沢靴でもノーテンで登れましたが、プロテクションがとり難いのと細かいホールドに立ちこむムーブになるため(体感6~5級位のムーブ)、クライミングシューズを持って行った方が無難です。
渓相の変化
後日WEB上で過去の記録と照らし合わせてみると、F3の下部に落ちている岩がチョックストーンとしてF3落ち口上に挟まっていたことがわかりました。
また、F4の釜には土砂が堆積していたようです。おそらく右画像の黄点線ラインが以前の水面ラインとなります。赤点線は登攀ラインです。
こんなにデカい岩が流されてくなんて、想像もできないような増水があったのでしょう。いずれにせよ、以前の記録とは全く異なる状況になっているので遡行の参考になれば幸いです。
下記の記録と比較してみると変化がわかりやすいと思います。
※サワグルイ様、ClimbingAlone様、勝手にリンク張ってすみません。
F4を越えると渓相は穏やかになり、癒し系の沢に。少し進んだところで左岸が切れるのでそこから上がれば10分もかからず右股に降りることができます。
右股下降
右岸と左岸がアシメな滝の下から少し下ると右岸ゴルジュがスタートです。
今回は50mロープ2本で3ピッチの下降でした。中間支点が乏しいので1本だと滑り台で下降することになります。どの滝にもある程度の深さを持った釜があるので飛び込みで下降しても何とかなりそう。
残地支点。他ボルトなどは見られなかった(見落としていた?)です。
岩が脆いから残地ハーケンなどもすぐに落ちてしまうのかもしれません。
画像左はF7?昔はラダーがあったそうですが、何もありませんでした。
ぱっと見ツルツルで弱点が無く登るのは難しいというか無理って感じです。右股は下降のみなので気楽にゴルジュを楽しみながら降りることができました。右股も左股もものすごいゴルジュ!
F1。左側のクラックをエイドを交えて登るそうですが、左岸からも巻けそう。
無事ロープもスタックせず懸垂し、往路下山。復路は終バスの時刻を過ぎていたため仙流荘駐車場まで徒歩で帰りました。