沢登り用のシューズの選び方と今まで使ってきた沢靴のレビュー
暖かくなってきて沢シーズンが近づいてきました。
以前沢登りの概要について簡単に書いてみましたが、今回はシューズについてもう少し詳しく書いてみたいと思います。これから沢登りを始める方への情報源になれば幸いです。
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沢登りで使うシューズ
沢登りは日本の伝統的な登山スタイルであると同時に、渓流釣りの釣り師たちの移動手段でもあります。
また、欧米では沢を下るキャニオニングというスポーツが発展してきました。
このような様々なバックグラウンドにより、沢登りで使えるシューズは登山専用のものから釣り用まで選択肢が広いのが特徴です。その中で沢登りのスタイルによって好みが分かれます。それぞれの特徴を挙げてみます。
①沢登り専用シューズ
モンベルやキャラバンなどのメーカーから販売されているシューズです。トレッキングシューズなどの山靴に沢登りのノウハウが詰め込まれた商品です。シューズタイプのものからタビタイプのものまで様々なものがあります。
専用シューズということもあり、当然使用者は一番多いです。構造上も水流が入りにくくなっていたり、水はけがよくなっていたりします。
ソールはフェルトソールとラバーソールがあり、それぞれ一長一短です。シューズの特徴も含め、後述します。
②日本の伝統、タビ&ワラジ
ヌメりに対して絶大なフリクションが得られるのが最大の特徴です。デメリットとしてはワラジの消耗が激しいため自作しなければコストパフォーマンスが悪い点が挙げれられます。私は作ったことはありませんが、PPロープで編むと耐久性UP&原価が数百円になりコスパが良いみたいですね。
購入すると手間はかかりませんが、1つ2千円近くするワラジが一回の沢行でダメになってしまい、結局沢用シューズを買った方が安いのでもはや趣味のレベルです。
いずれにせよ、現代の沢登りにおいて使用者はごくわずか。
③釣り用シューズ
鮎釣りや渓流釣りのために作られたいわゆるウェーディングシューズです。
フィッシングタビ などの商品名で売られており、ソールには沢登用のシューズと同様にフェルトが張られていたり、スパイクのついているものもあります。
価格はピンキリですが安価な物も多く、使用者は割と多いです。割と高価なウェーディングシューズはスパイクがついていたりフェルトとゴムの混合ソールなどがあり、沢登ようのシューズでは見られないラインナップもあります。
しかし、クライミングなどのシーンは想定していないため、細かいフットホールドへの立ちこみなどは苦手なものが多いです。
学生時代は貧乏だったのでよく使っておりましたが、セール品やアウトレット品などを狙えば実はそんなに沢専用シューズと値段が変わらないことに気づいてから使っておりません。
とはいえ、簡単な沢歩きをメインとする方にはコストパフォーマンス面から最適なシューズでしょう。
④キャニオニングシューズ
キャニオニングで使用されるシューズです。アディダスなんかも作っていたりもします。基本的にはラバーソールとなるみたいですが、日本では個人輸入か一部のキャニオニング用品販売店以外ではまず購入できません。
割と種類があるのと見た目がカッコいいので一度は使ってみたいところ。
どうしても欲しい人はCANYON STOREとかEXPEで日本へ輸入できるので買ってみたらよいのではないでしょうか。
⑤その他
そもそも水に入ることを目的として作られていないシューズを用いる人もいます。代表選手がハイパーVです。使用感などは後述しますが、圧倒的なコストパフォーマンスの高さがメリットです。
そのほか沢靴よりも高価なアプローチシューズで沢に突入する猛者なんかもいます。
あとは、難易度の高い大滝登攀などではクライミングシューズを用いたりもします。平山ユージさんが称名滝登るときには沢靴とクライミングシューズを使い分けてましたね。
上記のように色々とあり、色々使ってきましたがこれから沢登り始めるよって方は専用シューズを買いましょう。やっぱりスタンダードが一番。
ソールについて
具体的な商品名を挙げる前にソールについて解説します。
前述のとおり、沢登り用シューズのソール(靴底)には大きく分けるとラバーのものとフェルトのものがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。
①フェルト
フェルトはウールなどの動物の毛を押しつぶしてシート状にしたものを指します。
フェルトソールのものはヌルヌルとしたコケやバイオフィルムに強く、オールラウンドに活躍できる点がメリットとなります。素材は化学繊維のものとウールを使ったものがありますが、ウールのものの方が目が細かくフリクションが良いです。しかし値段はメチャクチャ高いです。
フェルトのデメリットとしては、まずソールの減りが早い事です。大体山行日数で考えると15日~20日位でダメになってしまう感覚です。
また、ソールが完全にフラットなので泥壁や登山道などでは滑りやすいです。そのため、高巻きなどではチェーンスパイクや軽アイゼンをつける仲間も居ます。
私は泥壁をフェルトで歩くときは、つま先をしっかりと蹴りこみ段差をつけながら登り降りします。雪山でのキックステップと同様のイメージです。
沢から上がってから長く歩く沢では減りが激しくなるのでアプローチシューズを別途持っていった方が良いです。
②ラバーソール
水中でも滑りにくい柔らかいゴムを使ったソールです。ヌルヌルとしたコケの生えていない岩において絶大なフリクションを発揮します。フェルトソールでは滑ってしまうようなスラブでもピタッと止まるので、飛び石や岩登りの多い沢で有効です。
また、硬さがあり通常の登山靴のようにも使えるのでアプローチシューズを兼ねることができます。
デメリットとしては、ヌルヌルのコケや岩には弱い点です。慣れないうちはいきなりツルーンと滑るので注意して歩きましょう。
☝フェルトとラバーどちらを選ぶべき?
初心者は安価でクセの少ないフェルトソールがオススメです。
とは言え大滝登攀や滝洞谷などのクライミング必須の沢ではラバーソールでないと突破不可だったりもするので、登り系の沢を目標としている方でしたら初めからラバーソールでも良いかなと思います。
ちなみにラバーソールはモンベルでは自社開発のアクアグリッパーが使われており、キャラバンではビブラム社製のIDROGRIP(イドログリップ)が使われてます。今は廃版となってしまいましたが、ファイブテンのアクアステルスというソールも非常に評価が高いソールでした。
私は両方使ってますが、ソールパターン、グリップ性能にそこまで違いは無いかなと思います。どちらも岩の上ではクライミングシューズの様にピタッと止まります。
☟モンベルのアクアグリッパー
☟ビブラムのイドログリップ
山岳会によってはフェルトにすべきだラバーにすべきだなど議論されることもありますが、沢登りで重要なのは歩き方やルート取りです。
クライミング必須の沢でなければどちらのソールでもどうにかなりますし、シューズに頼らないと遡行できないようであれば単なる技術不足でしょう。
沢靴の靴下
基本的には靴下を履きますが、タビ系の沢靴の場合はネオプレンに包まれて靴ズレがしにくいのでクライミングシューズのように素足に履いたりもします。
靴下は登山用の靴下でも構いませんが、沢用の水はけの良い素材でできているソックスやネオプレンのものなどがあります。オススメは保温性の高いネオプレンソックスです。私はキャラバンの渓流ソックスを愛用しております。
各商品の紹介とレビュー
現在稼働中の沢シューズたちです。セールやアウトレット品などで安いものを見つける度に購入していたらこんな量になってしまいました。フェルトソールの物は予備含めて4足。ラバーソールの物は3足。
メーカーはキャラバンとモンベルから販売されております。あとは登山用品店の秀山荘がオリジナルシューズを出しておりますが、購入場所は限られます。
以前はファイブテンも出してましたが現在は販売しておりません。
私は諸事情でモンベル商品ばかり使っておりますが、メーカーによってそこまで大きな差異は無いかと思います。
過去に使ったシューズも含めて、レビューしていきたいと思います。
フェルトソール
①モンベル サワーシューズ
価格(2020年3月、2022年4月現在)6820円税込
モンベルから出ているタビ&ワラジをイメージして作られた沢靴です。私のメインシューズの一つとなっています。
クロロプレンゴム製のタビタイプなのでフィット感・保温性が非常に優れています。また足裏感覚に優れたシューズで、足先でつまむような感覚で小さなフットホールドに立ち込めます。つま先が柔らかいので石を蹴っ飛ばしてしまうと非常に痛い点が短所です。
価格も専用シューズの中では安く、モンベルのアウトレットでは一足4000円位で販売されてたりします。
初心者の最初の一足からベテランまでオススメできます。迷ったらこれを買っておけば間違いないと個人的には思ってます。服部文祥さんもヤマケイでべた褒めしてました。
つま先がタビの様に分かれておりますので、靴下選びは注意してください。
フィット感が良いので私は裸足で履いておりますが、靴擦れする人も居るので靴下履きが無難です。
②キャラバン 渓流タビ
価格(2020年3月)8580円税込 (2022年4月現在)9240円税込
キャラバンから販売されている沢タビです。
コンセプトと構造については上記のサワーシューズとほとんど変わりませんが、大きな違いとしては足首にファスナーがついている点とつま先がアウトソールもタビの様に分かれいる点です。
サワーシューズにはファスナーがついていないので、足の形によっては結構脱ぎにくいのですが、こちらは楽に脱げます。指が分かれている分、より一層つま先感覚が豊かです。
③モンベル サワートレッカー
価格(2020年3月、2022年4月現在)14190円税込
足首にサワーシューズと同じようなクロロプレンゴムが使われているので、水流・砂利の侵入が防げます。
2021年より大幅なモデルチェンジとなり、ダブルブーツのように紐靴がスパッツで覆われるような形になりました。足形も若干変わったみたいです。
タビタイプのものよりも堅牢性があるので岩を蹴っ飛ばしても痛くないです。一応リソールもできるのですが、フェルトの寿命に対してのコスパがあまりよろしくないので私は現在は使っておりません。
履きやすいので初心者に大変オススメできるシューズです。
ラバーソール
①キャラバン KR_3XR
価格(2022年4月現在)17600円税込
※私が現在持っている下記画像のものは、古いモデルのKR1です。
基本的な構造はモンベルのサワートレッカーなどと同様です。足首のクロロプレンゴムが無い事が大きな違いとなります。
3mmのネオプレンソックスを履くことが前提のサイズ感なので通常の靴よりも大きめです。また、水にぬれると若干生地が伸びるような気がしますので、少しキツ目のサイジングで調整した方が良いかもしれません。私の沢仲間もこの靴を愛用しておりますが、同様のことを言ってました。
これは5年位前に購入してメインシューズとして使ってきました。
ソールはほぼ無くなりましたが、イドログリップは非常に優秀でクライミングシューズのようにゴム自体のフリクションがあるのでしょう。ブロックパターンがほぼ消失しても岩でのフリクションを保ってます。
②モンベル サワークライマー
価格(2020年3月)15400円税込 (2022年4月現在)16390円税込
2018年まで販売されていたサワートレッカーRSのリニューアルモデルです。要はサワートレッカーのラバーソールモデルとなります。ソールも改良され、ブロックパターンが若干深くなり、つま先をラバーで覆う形になったので靴底剥がれしにくくなりました。
こちらもサワートレッカーと同様に2021年よりダブルブーツ方式になり、大幅なモデルチェンジがなされました。前回のリニューアルで足形が細長くなり、つま先が余ってしまう点が難点でしたが、若干の改良がなされているようです。
堅牢なこととラバーソールでアプローチもこなせることから、現在泊まりの沢やクライミング要素のある沢でのメインシューズとなっています。
2022年現在はキャラバンのラバーシューズとそんなに値段が変わらなくなってきました。廃盤?となったキャラバンのKR_4は2万越えと沢靴としては高すぎましたね。
③モンベル サワークライマーリールアジャスト
価格(2020年3月現在)15400円税別 2022年現在 廃盤
残念ながら廃番になってしまいました。
サワークライマーの靴紐がBoaフィットシステムになり靴全体のフィット感が向上し、着脱がより快適になっています。また、アッパーがよく見るとローカットになっており、足首の可動性が高まっています。
私はサイズをワンサイズ下げタイト目のフィッティングで購入し、クライミング要素の強い沢用に使用しております。
値段はモンベルのシューズの中では高めですが、とても快適なシューズです。
④モンベル サワタビ
価格(2020年8月)7480円税込 (2022年4月現在)8800円税込
2020年6月より使いはじめました。サワーシューズのラバーソール版です。
履き心地はサワーシューズとそんなに変わらない印象。ベルクロでの締め付けなので、脱ぎ履きが楽です。
足裏感覚は抜群で登り系の沢で調子よい感じですが、ソールは薄めで泊まり沢では足裏が痛くなるので使いません。
また、別売りの『サワーサンダル タビ用(5000円税別)』と組み合わせる事でフェルトに変換可能とのこと。これは買う人いるのだろうか・・。使うタイミングがわからないので、私は買いません。
その他
ハイパーV #003
価格(2020年3月現在)約2500円~3500円税別 位
これはアウトドア用シューズではなく、作業用シューズです。日進ゴムにより開発されたアウトソール『ハイパーV』のフリクション性能がすさまじく、また圧倒的なコストパフォーマンスから一部クライマーや沢屋に人気です。
アウトソールはこんな感じです。
友人のイボGさんはこれで滝洞谷などの高難易度の沢なんかも完全遡行しました。
実際に沢で使ってみると、やや目詰まりしやすいですがフリクション性能は抜群です。
フリクションだけならばイドログリップとあまり変わらない性能と言えるでしょう。
その一方、やはりアウトドア用のシューズではないということがデメリットかもしれません。
とにかくアッパーの耐久性能が低く、アウトソールがはがれやすいためすぐにみすぼらしい風貌になってしまいます。また、フィット感もあまりよろしく無いので初心者の最初の1足にはあまり適しておりません。
ただし、それらのデメリットを差し引いてもこのコスパとフリクションは余りあるメリットと言えるでしょう。
選ぶ際はつま先に芯の入った安全靴タイプと入っていないスニーカータイプがあるので注意。安全靴タイプで下山すると足爪が死にます。#003が先芯無しタイプです。
今後使ってみたい気になる沢靴
①モンベル パドリングシューズメッシュ
価格(2020年3月現在)約8800円税別
東京の沢仲間がよく使っています。ソールはサワークライマーと同じくアクアグリッパーで足裏感覚が良くクライミングしやすいのと価格が安くて良いみたいです。
②MIC CANYON
価格(2020年3月現在)€64.90(約8000円位)
キャニオニングブーツです。値段が割とお手頃なのと、ソールパターンが気になるところ。ケイビングブーツっぽいのかな。気が向いたら買ってみます。
以上、長々となりましたが沢登りシューズについての紹介でした。使用シューズが増えましたら適宜更新していきたいと思います。
また、こういったオススメシューズがあるよ!というのがあれば教えていただけると嬉しいです。