ムカデのおにいさんのブログ

ムカデのおにいさんのブログ

登山ガイド・森林インストラクターとして登山ツアーを作っていたりします。沢と山と自然観察の情報発信と記録のブログ。

庄内川から東谷山 愛知県の地質・岩石観察 【2019年9月21日】

いつもお世話になっている地学の先生と庄内川・東谷山に地質・岩石観察に行ってきました。

目的は私が造成している地学ツアーの下見ということで、東谷山とその北部を流れる庄内川河床の石ころについての観察です。

前々から気になっていた東谷山とその周辺を学ぶ事ができ非常に楽しかったです。名古屋市最高峰として親しまれている東谷山周辺は歴史資産・動植物の豊富さ・地学的観点からも見所満載のスポットでした。

下記それぞれの概要です。

東谷山

東谷山は、愛知県守山区瀬戸市にまたがる名古屋市最高峰の山です。といっても標高198m程で、30分もあれば山頂に到達できるお手軽な低山です。

周辺は愛知県自然環境保全地域に指定されていてシデコブシシラタマホシクサなどの東海ならではの植物が多く残っております。

また、歴史資産も周辺に数多く存在しており、一帯に展開する志段味古墳群の存在が有名です。今年度から『しだみ古墳ミュージアム』が開館し、古墳についての展示や体験プログラムなどが行われております。

庄内川

庄内川岐阜県から愛知県北西部を流れて伊勢湾に注ぐ河川です。

高蔵寺あたりでは中流域となり、石ころ観察に適当な大きさの岩石がゴロゴロと転がっております。色とりどりのチャートや頁岩、ホルンフェルスなどが転がっており、たまに珪化木やメノウなどが観察できるらしいです。

さて、今回は高蔵寺駅からフルーツパークを通過し、東谷山を登って庄内川の石ころを見るといった流れで観察してきました。

f:id:sawakaido:20190924001532j:plain

庄内川を過ぎて少し登ると白鳥塚古墳があります。しだミューを含めて結構力を入れているらしく、綺麗に復元されており上まで遊歩道がついています。

f:id:sawakaido:20190924001737j:plain

説明書きです。

地学の先生から伺ったのですが志段味古墳群も含めて、この周辺の古墳は基本的には河岸段丘上を少し登ったところに建造されているらしいです。理由としては河岸段丘上の平坦な土地が建造に適しており、また権力者の墓なので少し見上げた位置に建てる必要があったからとのことです。

確かに改めて振り返ってみると少し坂を登ったところに古墳があり、地形図にも川沿いに古墳が存在する事が見て取れます。自然構造物と文化の関わりを実際に目で見るのは面白いものですね。

f:id:sawakaido:20190924002231j:plain

東谷山フルーツパークに入る手前の道路沿いに見える露頭です。

流水の影響を受けた岩石や堆積物が見られることから庄内川河岸段丘であることが読み取れます。こういった露頭はどこにでもありそうですが、道路沿いは法面工事がされていることが多くみられる所は少なくなっているそうです。

f:id:sawakaido:20190924002534j:plain

フルーツパークから東谷山に入ります。整備されたハイキングルートを登ると早速古墳が。といってもパッと見元からあった岩と区別がつきませんよね。

f:id:sawakaido:20190924002708j:plain

立派な説明書きがあります。

f:id:sawakaido:20190924002812j:plain

岩質は『ホルンフェルス』です。ホルンフェルスとは、砂岩や泥岩などの低温条件でできた堆積岩等がマグマ貫入による熱影響を受けて鉱物組成が変化した接触変性岩です。非常に硬く、花崗岩と共に東谷山を形成している主要な岩石です。見分け方としては、熱影響を受けているため表面の質感や割れの形状が元の堆積岩とは異なってくるらしいです。

f:id:sawakaido:20190924003359j:plain

風化により真砂(マサ)化した花崗岩です。燕岳や御在所岳の様に、地面には白っぽい砂が堆積しています。

f:id:sawakaido:20190924003516j:plain

これは風化により花崗岩の芯が残った文字通り『コアストーン』と呼ばれるものらしいです。

f:id:sawakaido:20190924003657j:plain

南社古墳。埴輪はもちろん複製品です。

f:id:sawakaido:20190924003929j:plain

綺麗な看板

f:id:sawakaido:20190924003950j:plain

社の土台にマダラマルハヒロズコガの幼虫が落ちてました。初見なので嬉しかったです。

f:id:sawakaido:20190924004134j:plain

麓にはシラタマホシクサの群落もあります。

蚊に刺されつつ色々と楽しんだあとはフルーツパークで昼食を取り、庄内川へ。

f:id:sawakaido:20190924004359j:plain

庄内川河川敷です。ご覧の通り普通の川岸です。ここに落ちている岩石を観察しました。

f:id:sawakaido:20190924004634j:plain

チャート。色々な色がありますが、全部チャートらしいです。熱変性により様々な色のものが見られるとのこと。こう並べてみると本当に綺麗です。

f:id:sawakaido:20190924004748j:plain

ホルンフェルス(左)とその元になった頁岩(右)です。こう並べてみるとホルンフェルス化した方はボコボコとした感じで質感が全く違うのが解ります。

f:id:sawakaido:20190924004938j:plain

濃飛流紋岩です。ぱっと見礫岩に見えますが、溶結凝灰岩の一種です。名前も流紋岩という名前がついて紛らわしい石ですね。

f:id:sawakaido:20190924005052j:plain

色によっては花崗岩(左デカい石)と私には似たように見える物もありますが、プロからすると全然違うみたいですね。

まだまだ色々な石があるみたいですが、今回はこんなところで帰路につきました。

岩石は成分等で本当に色々な顔を見せ、奥が深く難しいです。ただ、少しでも理解すると街中をあるいていても新たな発見を楽しむことができます。沢山観察して理解を深めていければと思います。