【2019年2月10日】登山中の事故記録 事故時の救助要請方法などについて
先日岐阜某所でアイスクライミング中、グラウンドフォールに巻き込まれてレスキュー搬送される事態になりました。
今回恥ずかしながら初めて要救助者側を体験したことと、山での救助要請について情報源になればと思い書いてみます。
●事故状況
12:30頃2ピッチの50m程の滝を登攀中、2ピッチ目を知人がリード、私がビレイヤーという状況において10mほど登ったところでクライマーが墜落。
3本打っていたスクリューのうち1本が抜けてビレイポイントまでグラウンド。
ビレイヤーの私に直撃という事故でした。
幸いな事にダブルロープの伸び分でのグラウンド、また私にあたり衝撃吸収されたのかクライマーは打撲程度で済みましたが、私は右足脛骨と脛骨骨折の全治6ヶ月の重傷を負いました。
支点のハーケン3枚のうち1枚、バックアップでとっていたスクリューが引っこ抜ける位だったので相当な衝撃だったのでしょう。
後続が丁度登ってきたところだったので、支点構築して貰い、何とか痛みに耐えながら自力での懸垂下降で取り付きまでおりました。
自力下山を考えましたが、右足は加重を一切かけられない状態であること、またアプローチが1時間半ほどかかることから救助要請の判断をとりました。
15:45ごろ、岐阜県の防災ヘリが到着し、ストレッチャーにて引き上げて貰い、病院まで搬送されるに至りました。
●事故要因
氷の状態があまり良くなかったにも関わらず、13cmのスクリューを打ち込んでいたのが大きいかなと思います。
氷の状態によってはバックアップで本数を増やしたり、長さのあるものを使うことが重要に思います。また、アイスにおいては危険度が高いため完登に拘らずプロテクションがうまく取れなかったら素直にアックステンションをかける心構えを取ることも重要です。
なんにせよスクリューを当てにしてはならないというのを身をもって実感しました。プロテクションの状況によっては死亡事故になっていた可能性もある中、右足骨折だけで済みある意味よかったのかもしれません。
●救助要請について
職業柄救助要請に関わることがあるため、冷静に救助要請を出来たことが本事故において唯一良かったことかもしれません。
電波状況によってはヘリが要救助者を探すのに時間がかかることもあり、適切な伝達が必要になります。
110番、119番どちらに連絡しても情報共有されてレスキューを要請することができます。有時の際は必ず下記内容を確認されます。
- 事故の発生日時・発生場所
- 傷病者の住所、氏名、年齢、連絡先など
- 事故の要因
- 傷病者の容態
- 身体的特徴、着ているウェアの種類や色など
- 登山届けの有無
救助隊員の皆様は要救助者である私へずっと声がけ、きめ細やかな容態観察、ヘリの爆風を身を持ってカバーして貰ったりと、素晴らしい対応を取っていただきました。彼らは仕事として行っているのかもしれませんが、心の底から感謝しています。
●救助費用について
今回は県の防災ヘリが出動したため救助費用の請求などはされませんでしたが、民間ヘリが救助にあたった場合は数十万円~数百万円の請求が来ることがあります。
要救助者によっては、救助のヘリに向かって費用がかかるならば来ないでくれと言う人が割といるのが実状です…。当たり前のことですが、実際の救助現場において要救助者がこれを選択することはできません。
最近は県警または防災ヘリが来ることが多いですが、民間ヘリが来て請求を受けているお客様を見ることもあります。通常保険では遭難費用はカバーされない場合があるので必ず登山をする方は山岳保険に加入しましょう。
今回の事故においては右足の骨が折れており、無理に歩いたら転位の可能性が高かったため迅速に救助要請の判断をとり正解だったと思います。
以上簡単に書かせていただきましたが、一番重要なのは事故を起こさないことだと思いますので、治ったら安全管理に努めていきたいと思います。